線形代数といえば,大学に入学して最初に学ぶ数学です(微分積分学もありますね).
行列・ベクトル・1次方程式,それらを一般化した線形写像を扱います.最近は高校の数学で行列を学習しなくなったため,戸惑う人も多いでしょう.
最近はAIや統計学を学ぶ人が増えましたが,線形代数が背景にあるため,線形代数を学び直したいという人が増えています.
ここではインターネットに無料で公開されている線形代数学の動画・教材・演習問題集をまとめました.多くは大学の講義用の資料ですが,市販の書籍に遜色ないものがたくさんあります.
ぜひ,あなたに合う教材を探してください!
初級編
高校の学習との橋渡しを重視しながら,行列やベクトルの計算方法を丁寧に解説した教材です.
YouTubeで有名なヨビノリたくみさんの線形代数編.基本的な内容です.
大学のテスト対策として,逆行列や固有値など,よく狙われる分野をターゲットにした解説も充実している,かゆいところに手が届く構成です.
私立高校・中学で数学の先生をされている古賀さんの解説.基本的な内容を網羅しています.
「Past Courses 3 :微分積分・線形代数(学部1年生対象)」の「線形代数I」です.
連立一次方程式を解けるようになる,あるいはコンピュータに解かせることができるようになることを目標としています(背後の理論の理解なくしてコンピュータは使いこなせません).そのため,内容は絞り込まれています.
カラフルさが斬新.解説が丁寧で親切な作りです.
中級編
高度な概念も噛み砕いて懇切丁寧に説明してあり,その気になってしっかり読めばかなりのことが理解できます.
物理数学全般をカバーする教科書です.
線型代数の話題は第6章~第7章.ベクトルや行列の基本から物理学への応用を意識した話題を取り扱っています.固有値や確率行列の取扱に詳しいです.
確率行列のGoogleのページランクへの応用についての解説が興味深いです.
85ページの比較的短いレジュメの中に、線形代数の一通りの内容が含まれています。
最初に、巷にあふれる線形代数の教科書批判から始まります。本文もエッセイのような語り口で、演習問題も以下の調子です。「たわけ」というのがいかにも名古屋らしい。
- 問題を自由に設定して稽古せよ。答えは他所にはない、自らの中にこそ見出すべきもの。
 - 上の公式を …のように「証明」するのは大たわけである。その理由を大たわけに何と説く。
 
数学用語の日本語訳に対する批判も面白い。市販の教科書にはない味わいです。
考える線形代数(阿原一志著) という本の「公式」サイト。演習問題の解答を開いてみると、ビデオで解説してくれます。学生が解説しているようです。ネタに走る面白ビデオもありますが、内容はしっかりしています。
レポート課題などの関係で、解説のリンクが切れることがあるとのこと。
物理学科向けの線形代数の講義ノートです。
説明が丁寧で、(物理学科向けの)動機付けもはっきりしており、非常に分かりやすいです。
ポリシーをもって試験問題を非公開とされていますが、外から見ると、試験問題を解いてみたい気もします。
物理学全般を解説する有名なサイトです.抽象ベクトル空間とテンソルについて丁寧に解説されています.
こちらも物理学の解説サイトとして有名です.線形代数全般の解説のほか,量子力学への橋渡しを意識したためか,ユニタリ行列やブラケット記法までカバーしています.
上級編
抽象的な理論展開を重視していたり,扱っている内容が豊富な資料です.
講義の自習用資料を書き溜め,数学科向けに内容を追加してできたものとのことです.
A4で400ページ超という大変な分量ですが,これは,
- 線形代数全体をカバーし,厳密に解説していること
 - 本文やすべての例題の解答に対して,飛躍がないよう丁寧に説明していること
 
によるものでしょう.前書きにある通り,取捨選択しながら読むとよいでしょう.
冒頭の前書きも興味深く,参考文献の充実ぶりには目を見張るものがあります.
同じページに微分積分の講義資料もあります.こちらもA4で500ページ超という大分量の資料です.
理学部数学科の初学者向けとのこと.関数解析の初歩までを含み,線型代数としては豊富な内容です.
演習問題編
豊富な演習問題で,問題が解けたという充実感を味わうことができます.
「Past Courses 4 :演習・その他」の数学演習I~VIに,線型代数の問題が散在しています.
カラフルさが斬新.問題量が多く,骨のある問題もありますが,説明が親切です.
ミニテストも掲載されていますが,まさかギリシャ文字の書き取りが出題されるなんて学生は思っていなかったでしょう.
線形代数学のほぼ全範囲をカバーする,多数の例題と演習問題が載っています.巻末に全問の解答が載っています.
出版できる水準の内容だと思いますが,大学の経費を使ってまとめたという背景もあり,現在も無料公開を続けているものと思われます.
同じページに,微分積分学の演習問題集もあります.
 



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